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拳銃の一般的な機構・作動方式 2

さてこの話題についてすっかり更新を忘れていた次第ですが、いいかげん再開したいと思います。

ストレートブローバック・ディレードブローバックの仕組みについては以前の投稿で粗方分かっていただけたと思う。
(なお、この投稿を書くにあたって再度編集した)
今回はそのディレードブローバックの中でも、代表的なショートリコイル方式について解説しよう。


ショートリコイル
弾丸の発射によって生じた反動を利用するリコイルオペレーテッドの一つ。
9mm×19弾などのハイプレッシャー弾薬に対応しており、一部の機関銃にも採用されているが、多くは拳銃で用いられる機構である。

発射前、スライドとバレルは固定され、弾薬の入ったチェンバーは完全に閉鎖されている。
発射すると、それによって生じたガス圧をにより薬莢の後部はスライドを押すが、その際スライドは「特別な機構」によってバレルを閉鎖したまま共に数ミリ後座する。
後座し終える頃には弾丸はバレルを抜けており、発射ガスの圧力も安全域まで下がる。
その後、スライドはバレルの固定を解除、空薬莢を排出して、再装填を行う。

ショートリコイルの欠点としてはバレルを動かす必要があるためバレルは固定されず、寸法も作動に支障ないようにルーズに作られているため、振ればスライト内でバレルがカタカタと音を立てる物が多い。
シビアなシューターはそれを嫌い、競技用のカスタムハンドガンではバレルはカッチリとして動かないようになっているが、競技でもなければバレルのがたつきに実用上の問題はない。逆に言えば作動面からすればその程度のクリアランスは必要である。(なお市販のものでもバレルがカッチリとしたものはある)


ショートリコイルには主に
・ブローニング方式
・ブローニング方式・改
・プロップアップ
・ロテイティングバレル(ターンバレル)
といった方式が存在するが、「特別な機構」とはこの違いだけであり、基本的にはどれも似たような作動をする。
それでは各閉鎖方式について解説をしていこう。




ブローニング方式
天才銃器設計家のジョン・ブローニングは様々な銃のパテントを取得し、数々の名銃を世に送り出してきた人物である。
詳しくはこちらのHPで解説されている。
ブローニングの代表的な発明、ブローニングM1917、ブローニングM2にはショートリコイル方式が採用されている。
しかしブローニングの発明として最も有名なものといえば、やはり「コルトM1911A1 ガバメントモデル」をおいて他にあるまい。このコルトM1911を参考に、作動方式について解説する。(日本国内の認知度から、ここではコルトM1911をガバメントと略する)

まずブローニング方式とは、「バレルリンクを用いたティルトバレル」によるショートリコイル作動である。
(私談だが、私はごく最近まで「ティルトバレル方式のショートリコイル作動」がブローニング方式だと勘違いしていた。つまりショートリコイル方式もブローニングの発明と勘違いしていたのである。お恥ずかしい話でした)

ガバメントのバレル基部、チェンバーとバレルの付け根の上部には二つのロッキングラグが出っ張っている。通常、バレルとスライドの固定、すなわちチェンバー閉鎖時にはこのラグはスライド内のへこみに填まっている。
またバレルの下部にはバレルリンクと呼ばれる環が存在し、分解用のスライドストップの軸はそこを通し、固定されている。

弾薬の発射時、ショートリコイルの方式に従ってスライドはバレル基部にあるラグによって固定されたまま数ミリ後退し、バレルのガス圧が安全域に達したころには、バレルリンクがスライドストップ基部を軸に回転、バレルはわずかに下にティルトし(落ち込み)、スライドとのロッキングが外れてスライドだけが後退し、排莢と再装填を行う。

ブローニング方式の欠点(というよりガバメントの欠点)としては、小さいパーツであるバレルリンクが破損しやすいこと、ロッキング解除のプレッシャーがスライドストップの軸に集中し、何千発も撃っているとスライドストップ基部のロアフレームがひび割れることである。
この問題は後述する「ブローニング方式・改」ではなくなっている。



ブローニング方式・改
この方式はブローニング方式の改良版である。ここではブローニング方式・改を採用している銃として、軍用拳銃のさきがけとなった「SIG ARMS P220」(旧名称はSIG/SAUER P220)を例に挙げて解説する。

ブローニング方式と大きく異なるのは、同じティルトバレルにバレルリンクを廃してブロック型にしたことである。ブローニング方式と比べてパーツが少なくなり、堅牢性も向上した。

さらにP220のロッキングはバレル上部ではなく、バレルの後端と、スライドにあるエジェクションポートの一部で行う。
発射による反動でバレルとスライドは一体となって後座する。数ミリ後退したところでバレル下部のラグがロッキングブロックにひっかかってバレルがティルトし(落ち込み)、エジェクションポートとのロッキングが外れ、スライドだけがさらに後退する。

この方式で優れていることは前述の通り、作動に関わる部品点数が少なくなり単純化され、作製工程の削減につながった。エジェクションポートをロッキングに用いるのは素晴らしいアイディアで、しっかりとしたロッキングを行うために必然的にエジェクションポートを拡大したが、それはジャミング(ここでは噛み込み…ストーブパイプのみ)の軽減にも役立った。

なおブローニング方式の改良型を最初に取り入れたものはベルギー・FN社のブローニング・ハイパワーであるが、ブローニングハイパワーの場合、スライドとバレルのロッキングにはガバメントと同じようにバレル基部のラグを用いる。単純化としてはP220の方式が一番理想的であるようだ。

なおP220はその後、グロックやスプリングフィールド社XDピストル(XDピストルの原型はクロアチアだが)などを筆頭に、様々な拳銃に採用されている信頼性の高い方式である。



プロップアップ
プロップアップは近年の銃ではほとんど見られない作動方式である。
過去にはモーゼル・ミリタリー(ブルームハンドル)ワルサーP.38やベレッタM92F、ジウアウーロのデザインしたM9000(本当はこの銃の作動方式はプロップアップではない)などのように、銃身が大きく露出したものである。

GUN用語辞典によると、
銃身がロッキングブロックを介してスライドを結合し閉鎖、ロッキングブロックが支点を持って振り子のように上下して開閉鎖する。その際、チェンバーが完全に露出する、とある。

プロップアップでのバレルの動きは、ティルトバレルのような落ち込みをせず、平行に後退する。
そのためか一時期、「プロップアップ式のほうが命中精度が高い」という噂が広まり、信じられた。プロップアップにしろブローニング方式にしろ、バレルが動きはじめるのは弾丸がバレルから発射された後であって、その後にバレルがどのように動こうが弾丸の命中精度に変化はない。ただしどの方式も発射の際わずかにバレルが動くため、バレルが完全に固定されている機種と比べると理論的には命中精度は少し劣るはずである。(あくまで理論的な問題として)

プロップアップ方式の最大の難点は、バレルが露出するようにスライドが大きく削り取られ露出しているオープントップ型であるため、スライドの強度確保が難しい点である。
スライドの肉厚も足りないことが多く強装弾を用いるとスライドに皹が入りやすい。
かといってスライドの肉厚を増せば傾向する際に邪魔になる。ベレッタのスライドの横幅は28mmであり、現代の拳銃より4~5mmは太い。しかもこの太さでも強装弾を撃つことは前提にされていない。

逆にオープントップの利点として、ジャミングの処理や、スライドを少し引いてチェンバーに弾薬が装填されているか確認することが容易である。

ところで近年のアメリカでは訓練や試験を受けて合格したものにコンシールドキャリーライセンスを発行しており、それにあわせ銃の所持を悟られないように細身の銃を買い求める客が多くなった。
軍用としてレッグホルスターに収める分には何も問題ないかもしれないが、この太さではコンシールドキャリー(屋外で銃を衣服の下などに隠し持つ)にはまったく向かない。(もともと軍用のフルサイズハンドガンであるため、メーカーとしてもコンシールドキャリーなどは初めから頭にないと思われるが)

余談であるが、ワルサーP.38は本格的なダブルアクション(引き金を引くとハンマーが起きて、引ききるとハンマーが落ちる方式。多くの拳銃でみられる)や、トリガーを引かない限り暴発しないインターナルセイフティを本格的に採用した拳銃である。


ロテイティングバレル
ロテイティングバレルを採用している銃は少ない。ここでは珍しく成功例となったベレッタM8000を例に解説していく。

ロテイティングバレルとはつまり回転銃身である。この作動方式は通常のブローニング型のティルトバレルとは異なり、面白い動作をする。
まず弾丸が発射されると、銃身とスライドは数ミリ後座するわけだが、銃身表面には螺旋状の溝が刻まれており、それがロアフレームに備えられたカムに沿って回転しながら後退する。ちょうど30度の確度に達するとバレルとスライドの結合が解け、スライドがさらに後退して排莢・装填を行う。

ロテイティングバレルはティルトバレルと違い、回転しながらではあるが平行にバレルが後退する。プロップアップ型でもあったように平行に移動するから命中精度が良いわけではない。
なおロテイティングバレル型には二点の問題がある。
一つは、比較的砂・泥やゴミに弱い。つまるとバレルを回転させることができなくなる。
二つ目は、ゴミ対策としてカムに刻まれた溝とバレルのラグとの隙間がルーズであり、バレルがしっかり保持されていない。ブローニング型でもバレル・スライドは数ミリ後退するが、その数ミリ後退している間に弾丸がバレルを通過する。ブローニング型と比べてしっかり保持されていないロテイティングバレル式では、ブローニング型と比べて命中精度に劣るといわれている。だが実用上の問題は少ないであろう。

この作動方式を採用した銃としてはM8000の他、赤字続きのコルト社が起死回生を狙って発売した オールアメリカン2000がロテイティングバレルを採用していたが、M8000の機構より複雑で、しかも機構以前に様々な問題を露呈したため、発売中止となった。



トグルジョイント、ローラーロッキング方式はまた特別であるため、後の投稿で扱う。


なお今回の記事作製に当たっては
   GUN用語辞典
   月刊GUN 2002年9月号
   Guchi氏 鉄砲趣味初心者講座
   を参考とした。

新たに見つけた銃のHP Shooting Tips

Guchi氏、Shooting Tips.comさん共に質・情報量のどちらも凄い……
私がとんでもなく勉強不足であることを、改めて痛感いたしました。OTL
もっとがんばるぞ~



                       (で、銃関係のHPを作る計画はどうなったのよ、俺orz)
by CompoundBow | 2005-09-30 03:36 |


※当Blogの投稿記事はあなたの精神健康を脅かす恐れがあります。 ※投稿した記事は日本語として言葉として意味を成さないBow言で書かれております。


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