アンディ・マクナブ 「ラストライト」

またしばらく欝を再発しておりました。
表面上はなんとか明るく振舞いたくとも、やっぱり欝が収まる気配はなく、相当ダラダラとすごしております。(いつもだけど)

さて本日紹介するのはアンディマクナブ著の「ラストライト」。
小説としては彼の4作目となります。(本全体としては6作目かな)

(SASを知る上ではこのアンディ・マクナブという男を欠かせません。
80年代SASに入隊、世界各地で数々の作戦に従軍し、湾岸戦争ではイラク軍前線奥深くまで忍び込み、スカッドミサイル撃破を任務とした戦闘パトロール隊のコードネームから取った体験談、「ブラボォー・ツー・ゼロ」が特に有名です。任務に失敗し、300km先のレバノン国境まで徒歩で逃亡しようと企てるも最終的にはイラク軍の捕虜となり、軍情報部や民衆からの拷問を受けるという悲惨な体験を書籍化したものです。
他にもSAS従軍時代、入隊から各地で参加した作戦を綴った「SAS戦闘員」は、内容が拙いということでイギリス軍から公式に出版停止を求められ、逆にこの男の信憑性が高まってしまいます。最終的には一部を検閲…麻薬撲滅作戦に従軍した国名を消す…することで出版に合意となりました『ネメシス・ファイル』という、北アイルランドで約30人を抹殺したSAS隊員の"ノンフィクション"を描いたベストセラー小説家ポール・ブルースという方は「自分は元SAS隊員である」と嘯いていたのですが、RUC隊員(イギリスの警察か公安?)にとっ捕まって尋問を受けたあと「自分の小説はフィクションである」と認めたそうです。アンディマクナブはそういう経験はないので、こういう事例から考えると彼のSAS在籍や在籍中の体験は間違いないものでしょう)

閑話休題。
彼の小説は、はっきりいって小説とは呼べません。淡々と物事が進んでいくだけの話です。
しかし、和訳された4冊のどれもが極限状態でのサバイバル。監視網だらけの都会で国家機密を知ってしまったがために公的機関から追われたり、任務に失敗して荒らしの中の山を逃げ回るはめになったり、ハッカー集団の妨害をするために北欧の僻地まで飛ばされる(しかも悲惨なろくな装備もなしに雪中行軍をするはめに!)と、どれも悲惨です。さすが下っ端の使い捨て工作員。ザ・ファーム(秘密情報部…一般的にはMI6と呼ばれる機関)の上司も上司であんまりな命令ばっかり出して主人公ニックストーンおじさんの扱いが酷すぎて悲しくなります。
しかしどれだけ酷い扱いを受けても、友人の忘れ形見である愛娘ケリーのために汚れ仕事にまで手を出す。第一作で受けた酷い体験がケリーの精神を蝕み始めたとき、愛情表現にとぼしいニックは扱いに困りつつも、義娘のために治療費を稼ぐために汚れ仕事を進んで引き受ける。
ニックは元SAS隊員ということあり、逃亡しても闇雲に逃げ回るわけではない。逆に追っ手をはめる罠をしかけたり、"議会が認証しないような作戦"への政府関係機関の関与を証明できるような「お守りの毛布」(セイフティ・ブランケット)を取っておいたりと、死なないための工夫が作中にあちらこちらにちりばめられております。


と肝心な本作の内容を語ってなかった。
今回のテーマは「狙撃」。みなさん好きでしょ狙撃。そしてスナイパー。
が、本物の狙撃がどれほど大変か、冒頭を読めばそれが嫌というほど分かる。
本作冒頭で狙撃を担当するのは主人公ではなく、秘密情報部雇われの専業スナイパー。
ニックはSAS在籍以前の歩兵時代に部隊所属のスナイパーとなっていた経験があるが、それに打ち込み気はさらさらなかったもよう。
スナイパーについても、
「プロのスナイパーというものは、奇怪な生き物だ。政治からアイスクリームを買うことまで、一切合財が真剣勝負の惑星に暮らしている。一発でひとりを殺す、という宗教を信じ込んでいる」
「弾丸の弾道や風に対する補正みたいなこまごました事柄など、30分しゃべるだけで辟易する。一生そんな話をしているなんてまっぴらごめんだ」
と語っております。(笑)
まぁこの冒頭の狙撃は本の裏表紙に書かれている通り失敗に終わるのですが、そこからニックおじさんは無理矢理パナマに生かされる羽目に。ここからが彼流の狙撃任務になり、SAS時代に培ったサバイバル技術を駆使してジャングルを駆け回るわけです。
使用する武器もベトナム戦争時に米兵がべトコンから奪った、老朽化の激しいモシンナガン狙撃銃。最大装填数は5発なのにジャミング防止のため、弾倉には4発しかつめられないところがまたいい。

前述の通り本作は4作目に当たる本ですが、今回は第一作目の「リモートコントロール」についで出来が良い。第2作目は逃亡期間があまりに長すぎて飽きてくるし、3作目は北欧の大雪原に放り出される我らがニックの苦闘を読まされ、大自然の過酷さに読んでいるほうが途方にくれてしまいます。ただあっけない結末と長すぎる大自然との苦闘がミスマッチすぎて読む方は相当忍耐がいるわけですが、それでも筆者の極端に精密な情景描写とユーモアが、ニックの観察眼と行動をより真に近いものにしてくれています。

纏まってないけどまとめに。
彼の小説は、やっぱり「冒険小説」です。伏線にはほとんど期待しないほうがいいでしょう。(特に2、3作目は)
しかし同じスパイものとはいえ、格好つけてスパイと公言しまわって挙句の果て毎回女と寝るジェームズボンドとは逆です。
「ありふれた英雄像」からかけ離れているし任務も失敗続きでかっこ悪くても、。愛する義娘を守るため過酷な汚れ仕事を引き受け、ボコボコにされながらも結果世界を救うニック・ストーンおじさんのほうが格好いいし本当に惚れんです。頑張れニックストーン、そしてアンディマクナブ( ´∀`)及ばずながらもこの極東から彼らを応援しておりますぞ。


○余談。
第二目「クライシス・フォア」は1999年発行の書籍ですが、ビンラディンによるテロリズムを大々的に扱っているため、2001の9.11テロ以降「ビンラディンのテロを予測した!」などといって宣伝されております。まぁたしかにビンラディンはテロを起こしましたが、テロの形式はあんな飛行機突入などという派手なものではないため。書籍裏表紙にあるような煽り文句はどうかな…と疑問に思う私であります。
○余談その2。
まだ邦訳されておりませんが、第五作目は二作目冒頭でムジャヒディンに渡したスティンガーミサイルを回収しにいく話のようです。当時のアメリカが打倒協賛政権を抱えていたとはいえ、闇雲に武器をばら撒いて後々の問題を起こすようなことがばかりですな……イランのコントラゲート事件といい、どうしてアメリカがこう…と思わざるを得ません。
そのたびに下っ端工作員ニックは今日も過酷な戦場へ飛ばされるわけです。ニックに未来はあるのか!?(´・ω・`)
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by CompoundBow | 2006-03-13 16:10 | 漫画・小説・アニメ・映画など


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